Twitter発 お題140SS

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〈剣、箱、なまくら〉

剣は武器で、箱に納めておくものじゃないだろう。魔獣を倒した伝説が始まりだか知らないが、

一族の男たちが命を懸けて腕を競って欲したものが、特別の資質がなければ使う事も叶わぬ、

なまくら同然の代物だとはお笑い草だ。足元に転がる兄に向って吐き捨て、

少年は剣を片手に振り返りもせず出て行った。

 

〈パンツ、蚊、剣〉

「かゆい〜。」もう、せっかくショートパンツとニーハイできめたのに蚊にくわれるって「だから言っただろうが。」

あきれた様子を隠しもせずに背後から近寄ってきた連れが、いきなりあたしの腰の短剣を引き抜いた。

「ちょっ…」抗議の声は刃に一閃され足元に毒虫が転がる。

無言の圧力…そんな所は嫌い。

 

〈洗いざらしの綿、ダメ、耳鳴り〉

洗いざらしの綿の肌着が風にそよぐ。突然の雨で足止めを食らい潜り込んだ山小屋で一昼夜を過ごし、

ようやくのぞいた太陽に湿った衣服を預ける。いつからダメになったんだろう。

上半身をさらして隣に座る相棒を直視できない自分をどうにもできず、のぼせた頭に耳鳴りすら響く。

でも彼は隣に居るだけ。

 

〈泡、畦道、黄〉

真っ暗な空から落ちる雨粒で泡立つ畦道を、ともすれば根性が尽きそうな自分に活を入れ、

たぶん他人からから見れば必死の形相で、走り続けた。

理由はどうあれ別行動は避けるべきだった。

少しの後悔と共に見あげた視線の先に、見慣れた輪郭が黄金の縁取りで待っていた。

いつの間にか雨は上がっていた。

 

〈沙漠、目線、幻想〉

延々と岩と乾いた大地が続く沙漠を二人と馬二頭で進み続ける。

あたしの馬の手綱を引きつつ自分の馬を操る男は、無言で見渡す限りの水平線から目線を外さない。

焼けた肌と金色の髪、空と同じ色の青い目が、こんなに荒涼とした風景に溶けるとは知らなかった。

いや異国の陽光の下の一時の幻想なのだろう。

 

〈鏡、ガラス、一日〉140文字ならず、280文字

崩れかけた神殿の、かろうじて形をとどめている祭壇に鈍い輝きを放つ磨かれた黒い石。

ああ鏡なのか、うかつに覗き込んだとたんに視線を縫い止められて身動きが取れない。

まずいと思っても遅すぎた、じわりと侵食してくる向う側になす術もなく冷や汗が吹きだす。

が、不意に黒い世界に滑り込む金色。

侵食する禍々しい黒に輝く金が割り込んできた。金色が黒色を圧倒したと思った瞬間、

ガラスが砕けるように解放された。

後ろから黒い鏡を覗き込む金髪の相棒にもたれかかり、はーっと息をついた。

結局のところ一日かけて成果はこれか、とぼやく男に例の石を持たせ帰路につく。

あたしの足取りは少し軽い。

 

〈溶、徳、放〉漢字3個お題

溶解した岩の間を走りながら敵を追う。同行していた連中はとっとと逃げたようだ。

次の呪文を呟きながら徐々に距離を詰める…「ほーほっほっほ、相変わらず人徳がないわね。」

いきなり右前方岩の上に現れた謎の女にとっさに放ってしまった。

崩れ落ちる崖と下敷きになる敵と奴…まあ、大丈夫だろう。

 

〈弓、冬、廃墟〉

慣れた手つきで弓をつがえてきりきりと引き絞る。冬の凍てつく寒さもその腕には何の影響も与えないのか、

あたしではビクともしなかった弦が容易に降伏する。弓なんか使えたのと聞いてみても、ああと短い返事。

荒れ果てた廃墟に集う怪しい影に弓を投じて、物陰から踊りだす。色々と聞くのはまた後で…

 

 

〈仕度万端が整った、隠者、肉〉

「仕度万端が整った。さあいざ参らん。」いささか不安だが言葉に出さず依頼人の後に続いた。

まあ仇とやらは隠者のごとく山にこもった老体だし、ここ何日かガウリイが剣の指南もした。

自分を納得させて山道を進み、やがて狭い岩穴に差し掛かると…依頼人は腹の肉で挟まった。

ダイエット指導は別料金だ!

 

〈恋文、肉、マイク〉

熱々だったお肉も冷めてしまった。「飯時になんだ恋文か。」「んな訳あるか!この間の依頼人から…そのあれよ…」

些細な誤解から庭にマイクレーターを所有させてしまった件で先手をうたれた。正しい強気な説得という手もあるが…

上目使いに相棒の顔を見れば「逃げんなよ。」の一言…退路は断たれた。

 

〈ヒール、こちょこちょ、金髪〉

なんだかスゴく気に入らない。仕事だと割り切ってはいるが、これじゃあたしがまるっきり悪役(ヒール)じゃない。

彼女を射止めたいなら、こちょこちょとつまらない小細工しないで堂々と言えばいいじゃない。

そんなセリフに何を思ったか、苦笑いする相棒の金髪を横目で見ながら、次の言葉は呑み込んだ。

 

〈恋の病、凄腕、長靴〉

「それは恋の病…げふぉ…」凄腕の占い師だと聞いたから来てみれば、当然の様に人の体をペタペタ触って…ただの助平か。

「こら何してんだ。」やばぁ…物音を聞きつけて入って来た相棒に右手をつかまれて…視界に大きな長靴しか入らない。

あたしが聞きたいのは、こんな時に気持ちが顔に出ない方法なの。

 

〈アクセサリー、歌劇、そこで〉オチがしぼれず、2種類書いてみました。

☆「それを譲って。」護衛としてやって来た歌劇場の貴賓席、体中にこれでもかとアクセサリーを輝かせた

おば様…もとい依頼人の奥方がそんな事を言い出した。それとは魔血玉の事、やんわり断るもしぶとい。

そこで相棒が一言「それ呪われてるはず…」おかげで諦めたが、縁起が悪いと仕事は途中解約された…

 

☆「それを譲って。」護衛としてやって来た歌劇場の貴賓席、体中にこれでもかとアクセサリーを輝かせた

おば様…もとい依頼人の奥方がそんな事を言い出した。それとは魔血玉の事、やんわり断るもしぶとい。

隣の相棒が一言「それ指輪代わりだから…」そこで諦めたが、その後、意趣返しに散々遊ばれる事に…

 

〈朝食、廊下、吹雪〉

朝食の時間まで、ずいぶんあるが、もうお腹が空いている。

まだ薄暗い時間帯に冷えきった廊下を歩きながら、そんな他愛もないことを考える。

窓の外は昨日からの吹雪がまだ続いている。今日も出発は無理だろう。

まあ急ぐ旅でもないし、再びベッドに潜り込んで隣に寝ている大きな体で暖を取る事にしよう。

 

〈半月、田舎道、エビフライ〉

大きな半月が低い空にうすぼんやりと浮かんでいる。

「ねえ、こんな田舎道で夜になっちゃうよ。」

「人の背中で何を言うか。歩けないのはお前だろう。」

「だっておなか痛いんだもん。きっとあの食堂のエビフライのせいよ…あんたも食べたでしょ。」

「誰かさんの胃袋に4人前収まっただろうが。」

…無言。

 

〈錆びた鉄籠、←、だから〉140字ならず、280文字

薄暗い部屋、赤くこびりついた何かで錆びた鉄籠の中には、あたしより年下であろう少女の変わり果てた姿。

宙に浮く幻の様な を見たという奇妙な噂と殆ど同時に起きた子供の行方不明事件。

魔道士協会の依頼で調査して行き着いたこの家で待っていたのは最悪の結果だ。

鉄籠の後ろに男の影、手には剣。

偉大な実験だとか結界内では魔法は使えないだの外にはレッサーデーモンが居るだのと、だから何!?

窓の外で獣とも人ともつかぬ咆哮が聞こえる。あんなものは、魔力剣を手にしたあたしの相棒の敵ではない。

怒りを通り越して真っ白になった頭を上げて、男の顔を見据え、腰のショートソードを抜いた。

 

〈お題:葡萄、眠い、小さい〉

故郷まであと少し、延々と続く葡萄畑の真ん中の農家の納屋が今夜の宿だ。

柔らかな干し草の上で疲れていたのか眠いのか、すぐに寝息を立てた相棒に少しずつ近づき、ほんの小さい声で

「覚悟しなさいよ。」

と呟けば、肩を掴んで引き寄せられて

「しているよ。」

と返された。

ここで暴れるほど子供じゃない。

 

<お題:薔薇、愛憎、13>

だいたい男のくせに薔薇の刺繍の入った上着なんぞ着ている奴は、ロクなもんじゃない。

依頼主なので口には出さず、ただの痴話げんかを一大愛憎劇のごとく語るのを黙って聞いていた。

相棒は隣で腕を組んでうつむき加減で寝ている…

しばらく解放されそうもないので、13個目の焼き菓子を口に放り込んだ。

 

<お題:槍使い、仕上がり、撲殺>140字はあきらめました。418文字

「槍使いだったの?」

時は殆ど真夜中で先ほど帰ってきたばかりの相棒は、晩御飯を食べ損ね、仕方無いのであたしが作ってやった

食堂のものとは段違いに仕上がりが美しい料理を食べながら、報告をしていた。

「だってその置物で殴り掛かってきたのよ、そんなまっとうな使い手だったの?」

「そこそこ…。」

シチューを口に運びながら返事をするのが癪に障ったので皿ごと取り上げた。

「おい…」

抗議まで省略するか…

「槍使いがこの可憐な乙女を襲うのに何で置物なのよ。」

皿は即座に取り返された。

「そりゃ、こんな狭い室内で槍を振り回す訳ないだろ。適当なもので殴るのが手っ取り早い。」

「あのね〜っ。」

がたっと乱暴に椅子を引いて座る。

「埃たてんな。」

「だって、腹立つじゃない。このあたし相手に何で置物よ!一番得意な得物で来なさいよ。」

「撲殺されそうになったっていうのに、怒るところはそこか…」

呆れ顔の相棒に、本当はあんたに助けられたのが悔しくて…嬉しかったとは言えず、黙り込んだ。

 

<お題:緑、海辺、黒髪>

すっかり緑も褪せた町はずれの草っぱらで、若い男と女が剣を構えて対峙している。

海辺の町で見かけた頃より格段に腕を上げた金髪の男に、神力は使わないと宣言した

黒髪の娘の表情は真剣そのものだ。これは、久々に面白い事になりそうだ。

男は、火のついていない煙草を咥えたままニヤリと笑った。

 

<お題:カルボナーラ、涙声、条件>

あーっ、むかつく。やけ食いにはコッテリした物がいい。

「おっちゃんカルボナーラ3皿追加。」

注文する声が鼻にかかっているのは涙声ではなく熱い物を食べているからよ。

「おっさんそれもう3皿」

無言で目の前の椅子に座った男が勝手に注文する。

謝らないで収めようって思っても条件しだいだからね…

 

<お題:果実、父、夏>

相棒が高い枝に実った果実をもぎ取りあたしに投げてよこした。

子供のころは父が取ってくれたものだと話をしても、気のない返事しか返ってこない。

あんたにもそんな時あったでしょうと言うと、砂漠の夏は暑すぎて何も無いと不機嫌になる。

秋は、と問うと・・返事はいつもの忘れたで、話は終わりになる。

 

<お題:模写、そば、運動場>

まるで戦場をそのまま模写したような惨状に一瞬ひるんだが、傍らに無表情で立つ相棒に

「そばを離れないでよ。」

と声を掛ける事で精神の集中を保ち、さながら魔族の運動場と化した町に、慎重にしかし全速力で飛び込んだ。

 

 

<リナの実家の屋根裏は、魔導書書庫設定>

家の屋根裏に山のように詰まれた本。旅に出た妹が首都の図書館に通いつめて書き写した魔道書の写本。

多少は魔道をかじった程度の私では理解できない物ばかり。その量に妹の努力を感じはするが・・・

その重さを感じた天井が落ちかけて、補強に出費があった事は、帰郷のときのお楽しみにしておこう。

 

 

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