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長いこと遠慮していたんだよ、あたしにしては珍しく。

 

そりゃあ最初に、光の剣をくれるまでついて行くって言ったのはあたしだけど、でもあたしのような美少女天才魔道士と一緒にいて

、あんたが損な事なんてないでしょう。

それに、金額の交渉に契約、仕事の段取りと、全部あたしがやっているから、あんた楽でしょうし、剣士が一人で受ける仕事より、

魔道士と一緒の方がずっと実入りだっていいはずだし、まあこっちもあんたが便利な事は認めるわよ。あたしのような可憐で華奢な

美少女が一人で行って仕事の話をしても、馬鹿にして取り合わなかったり値切ったりしてくるのを、強引にねじ伏せて、話を進める

必要もなくなったし、本当あんたみたいなゴツイ成人男子が、こうも便利だとは思わなかったわ。

…話戻すけど、いくらあたしでもその程度の事が、あんたにとって、四六時中魔族に狙われている事が、帳消しになるほどの特典だとは

思えないし、でもあんたときたら怒りもしなけりゃ、突っ込みもしないで、まるで自分の事みたいに、関係ないって言っちゃえば、

それで終わりにできるのに、あたりまえみたいな顔して、自分の事みたいな顔して、なんで命を張るの、本当にわからないよ。

だから、さすがのあたしもその点に関しては、あんたに遠慮しているんだから・・・態度に出ていなくても、しているったら、してるの!!

 

でもねえ、最近気が付いたんだけどあたし。

あんたがあたしを心配してくれているのは、本当だろうし、その点は疑ってないわよ。

でも、それだけじゃないでしょう。

魔族が放つ瘴気で、ほかの人間が緊張して一歩踏み出せなくても、あんたは、いつもより少し真剣な表情ってだけで、まるで平気な顔して

、誰よりも先に剣の柄に手をかけて、一歩まえに踏み出すでしょ。人一倍勘の鋭いあんたなのに、まるで何も感じていないか、

何も考えていないような顔して、この間まで、本当に何も考えていないかと思っていたわよ。でもね、最近のあたしには、わかっているんだから。

一歩踏み出すあんたが、押し殺している感情が、本当は笑いたいんでしょう。眼の色でわかるわよ、いつもの眼の色が夏の空色なら、

それは冬の湖面だから。楽しいんでしょう、ギリギリのやり取りが。

確かにあんたの腕じゃ、よっぽどの相手じゃないと、そんな眼できないわよね、傭兵を辞めたのだって、戦場ぐらいじゃ面白くなかったから

じゃないの、別にそれが悪いなんて言う気は無いから、私にもそんなところが無い訳じゃない。

 

何度も何度も魔族とやり合って、何度も何度も倒してきたけど、その度あんたは、もうごめんだって言うけど、その台詞、もう単純には信じられないから。

 

長いこと遠慮していたんだよ、あたしにしては珍しく。

だけど、今日限りでやめにするから。楽しんでいるんなら、別にあたしが気を使う事も無いわよね。存分に楽しんで、その命が尽きるまで。

 

あたしは、あんたがあたしの傍にいて、最期まであたしの物なら、それでいいから。

終わり 

 

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ガウリイが聞いているかどうかは、ご想像にお任せします。

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