変なもの、書きました。ガウリナでゼルアメ。いや、ゼルアメというのも微妙な内容。

ちょっとでも受け付けないと思ったら、引き返しで。

 

 設定は、特に決めていません。勢いのみで書きました。

「 」= セリフ、『 』=心の声 でお願いします。

 

好奇心

 

「ねえ、市場の方に屋台が出ているんだって、言ってみようよ。」

宿の女将さんに、明日の早朝に発つ旨を知らせに言ったはずの、小柄な女魔道士は、戻ってくるなり、期待で大きな目をキラキラ輝かせて、

3人の仲間達に話しかけた。

「リナ、さっき晩御飯を食べたばかりじゃないの。それに明日は、早朝に出発するのでしょう。早く休みましょうよ。」

諭すように話すのは、正義の使いにして、聖王国の姫巫女。

「おれは、遠慮する。」

と、キメラの魔剣士。

「もー、ちょっとぐらい、いいじゃない。ガウリイ行こうよ。」

 結局、彼女はいつもの相棒、常識外れの剣の腕を持つ元傭兵を連れて、嬉しげに出て行った。先ほど食事を終わらせたばかりなのに、

宿の玄関でアメリアは、ただ呆れて二人を見送った。

『あの食欲が、お二人の底無しの魔力と体力の源なのでしょうか、とても真似できるものじゃありませんけど。さてと、わたしは、今の内に

お湯でも頼んで、明日の出発に備えましょうか。』

 たいした宿ではないので風呂は無く、女将さんに別料金を払って、宿の家族と同じように台所の隅につい立を立てて、たらいに張ったお湯をつかう。

城にいるときには、考えられない事だが、庶民の家庭などこんなものだと、いつもなら一緒にお湯を使っているはずの、旅の連れに言われては、

従うしかない。それに慣れればそれなりに面白い。もっとも男性陣など、よほど寒くない限り、外の井戸端で水をつかう。

箱入り育ちの姫には、驚く事ばかりだ。

『あーっ、さっぱりしました。さてリナ達は、もう帰って来たのでしょうか。いくら元気なお二人でも、あんまり遅いと出発に差し支えますよね。』

 廊下の窓から、宿の庭越しに街を眺める。夜だというのに魔法で灯した明かりが溢れて、まるでお祭りのような明るさだ。なかなか

賑わっている街なので、もっと中心部にいけばお風呂のある宿にだって泊まれたはずだが、キメラの男が承知するギリギリの場所が、

この街の外れだった。

 

 賑わっているであろう街の中心部と違い、宿の前の寂れた小路は街灯一つ無く、家々から漏れる明かりの中を、こちらに向かって歩く影が、

自分の待ち人だと気付いたのは、大小二つの影が、アメリアが窓越しに覗く庭の前に差し掛かってからだった。リナは、少し酔っているのか

、ほんのりと赤い頬をして、ニコニコとご機嫌で、自分よりはるかに上の、ガウリイの顔を見上げて、何やら盛んに話し掛けている。

ガウリイがふと足を止める。1歩進んだリナはくるりと振り返り、下から顔を覗きこみ、声をかけた。勿論アメリアからは、声は聞こえない。

一言二言、そしてガウリイに向かって1歩踏み出す。

突然、大きな手が小柄な体を抱えあげた。そのまま、かろうじて目隠し程度の雑木が植えられた、宿の庭へ入り込み、そこそこ丈夫そうな

手近な木の幹に、彼女の体を押し付けた。リナが、ちょうど自分の正面を向く格好になってしまい、アメリアは慌てて身を隠して、

こっそり様子をうかがった。

顔をガウリイと同じ位置に持って来られて、リナは、宙に浮いている格好になってしまった。いつもなら、怒ってスリッパの一撃と思うような

場面だが、照れているような困ったような表情で、自分を抱き上げている男の顔を見つめていた。

『あら、あんな表情もできるのね。何だが別人だわ。でも、このパターンって、お城の中庭とかで侍女達が殿方と会っている、密会とかいうのかな。

いやでも、お二人は、別に密かに会う必要も無いけど、って・・・あらら・・・』

大きな影が小さな影に覆い被さるように重なっていく、小さなリナは、ガウリイの陰にすっぽり入ってしまってアメリアの位置からは、すっかり

見えなくなってしまった。しばらくして、細い腕が広い肩の上にそえられるまで、どれほどの間だったのか、その白い腕にアメリアは不意に我に帰った。

『って、嫌だわ、これじゃまるで覗きじゃないですか。』

 慌てて窓から離れ、仕方がないので、部屋に戻る事にした。二人ともそこに居るのだから、すぐに帰ってくるだろう。短い廊下のすぐ目の前にある、

2階の客室に上がる階段を、いつもなら駆け上がるところだが、今日は足が進まない。

『それにしても、晩御飯を食べた後で、また外で何か食べて来たのでしょうに、歯磨きもしないで・・・それとも、そんな事も気にならないくらい、

愛しく思えるものなのでしょうか・・・って、そんな事考えても仕方ない、わたしには、関係ないのだから。』

 正直、年齢相応の女の子らしい、いわゆる夢見る乙女心ってやつも、持ち合わせていない訳でもないが、あくまで好奇心の範疇にとどめる事を

心がけている。自制しているつもりはないが、自然と身についた防衛手段かもしれない。そんな自覚もない感情だが、好奇心の方は、初めて立場を

気にせず付き合えそうな、女友達とその連れに向いていたのだが、いくらあれこれ質問を変えて聞いてみても、彼女は、何もないと、頑として

言い続けるので、実は半ば信じていたのだ。なんだか、もやもやとしたものが、胸の中に巣食うのを感じて、慌てて打ち消そうとした。それでも、

なぜ友人が、自分にそんなことで嘘を言うのか、照れているだけだと言う事がわかっていても、どうにも、もやもやと消えそうにない。

 

 珍しくうつむいて歩いていたアメリアは、2階の薄暗い廊下の先で、自分とリナに割り振られた部屋の前に立つゼルガディスを、コンコンとドアを

叩く音で気がついた。こちらを見ながら、ドアを叩く姿は留守な事を承知の上で、アメリアに向かって叩いているのだ。声をかければいいのにと、

もやもやの上に苛々を重ねたが、表に出すような教育は受けていない。

「どうかしましたか、ゼルガディスさん。」

「いや、リナの持っていた魔道書を借りたいのだが、まだか。」

「いえ、下に居ますよ。すぐに上がって来ると思いますから、中でどうぞ。」

ドアを開けながら、手招きをして自分が先に入る。部屋の中は、窓から入る月明かりで、かろうじて物の識別がつく位だ。ベッドサイドのテーブルの

ランプを点けようとしたが、不慣れな為か上手くいかない。後から入ってきた男が、無言で彼女に代わり火を点ける。はあっ、とため息がでる。

座るところといえば、ベッドくらいしかない部屋だ、窓枠にもたれ掛かり、ちらりと外を見れば、そこは、先ほど1階の窓から眺めていたのと同じ庭だ。

生い茂った木々のせいで、二人がまだそこに居るのかどうかは、確認できない、窓を開ければいいのだがそんな気にもなれない。

「遅いな」

 ぶっきらぼうと言うのがピッタリな、ゼルガディスの低い声は、相手の機嫌などまったく考慮されていないのだろう。アメリアも、いつもなら気に

ならない事が、今日は何もかも気に障る、自分に苛々し始めていた。

「そうですね。もしかしたら、またお二人で出掛けたのかもしれません。」

「何だそれは、帰ってきていた訳じゃないのか。」

「・・・、いいえお二人は、お庭にいらっしゃいました。この窓の下の。」

 ゼルガディスは、窓際までやって来て、アメリア退かす事もせず、そのまま彼女の頭の上から、窓を開けずに下を覗きこみ、居ないようだぞと呟いた。

小柄なアメリアの視界は、目の前に立つゼルガディスの、月の光が反射して青白く光る白い服で埋まった。

 ちらりとゼルガディスを見上げたが、視線はいまだに窓の下だ。

「また、出掛けたのかもしれません。お二人は、この窓の下のお庭で・・・キスしていましたから。」

「そうか。」

 あっさりと、感情のこもっていないセリフを、表情も変えずに返された。

「驚かないのですか。」

「あんたは、驚いたのか。」

 ゼルガディスが、窓枠に両手を付いたまま見下ろせば、見上げていたアメリアと目が合った。

「いいえ、別に驚きはしません。」

「そうだろう。」

 アメリアだって、別に驚いてほしい訳ではなかったが、あまりの反応のなさに、先ほどの苛々が相まって、ほんの少し、この無表情な男を、

突付いてみたくなった。

「ゼルガディスさんは、もっと驚くと思っていました。だって、あなたは、リナのことがお好きなのでしょう。」

 アメリアのセリフにも、ゼルガディスは少し眉根をひそめた位で、その表情すら変えることはなかった。

「何だそれは、どこからそんな発想が出てくる。」

「どこからって、普段のあなたの態度から、しいて言えば目線からです。違いますか。」

「何を考えているか知らないが、おれは、あれを女だなどと思ってはいない。観察していなければ、あいつのやる事に、巻き込まれる

から見ているだけだ。」

「そうですか、そんな風には見えませんけど。リナが女じゃなければ、なんだと言うのですか。」

「女だろうが何だろうが、あいつを魔道士としか見ていない。おれにだって、好みというものがある。どこかの悪趣味な元傭兵と一緒にするな。」

 淡々と語る男の声に、少し感情がこもってきたように思えて、アメリアは、もやもやと苛々から来る不機嫌を、この不毛な会話の勝敗で

静めようとする、無意識の我がままと、男の腕の下にいるという、特異な状況にも気が付かないまま、次のセリフを口に出そうとしていた。

 

 

 宿の薄暗い部屋で、窓枠に両手を掛けた男と、その腕の中に居る女。ゼルガディスは、さすがにまずいと思ったが、自分を睨み付けている

アメリアの挑戦的な視線に、挑まれれば叩き伏せる、そうしなければ寝首をかかれる、そんな世界に長い間身を置いてきた所為なのか、

このばかばかしい状況においても、自分に対する挑戦を受けて立ってしまった。

「そもそも、あなたがわたし達に同行しているのは何故ですか。一緒に居たいからじゃないのですか。」

「おれの目的は、元に戻る事だ。そのために、少しでも可能性の高い話が有れば、そっちに行く。トラブルメーカーと一緒に居るのも、その可能性の一つだ。」

「一緒にいたって、舞い込んで来るのは、トラブルだけで、あなたの目的が果たせるとは、到底思えません。言い訳に過ぎないのじゃないですか。」

「目的が果たせるかどうかの判断を、何であんたがする。実際、おれの目的にかなり近いところまで行けた事もあっただろうが。」

 高いところから見下ろしていた男の顔が、一言ごとに自分の顔の方に降りてくる。アメリアは、見上げる自分の目の前、わずか数cmばかりの

ところに、相手の顔が迫ってきて、初めて自分の置かれた状況に気が付いて、焦って口をつぐんでしまった。

ゼルガディスは、このつまらない会話が、どちらかが折れるまで、いつまでたっても平行線で終わるだろう事に、すぐに気が付いてしまった。

どうして子供相手に、こんな意地を張ってしまったのか、そもそもアメリアが、何に苛ついているのかは知らないが、何故自分が喧嘩を売られて

いるのか、理由がリナとガウリイというのでは、何とも情けなさ過ぎる。くだらない、自分が謝って、折れてしまおう。

自分より小さい人間を圧倒するための常套手段で、上から覆い被さるように迫っていた為、目の前にあるアメリアの顔を改めてみれば、先ほどの

挑戦的な視線ではなく、何か感情を必死に抑えているような、なんとも頼りなげな、今まで見た事も無いような、表情を見せていた。

『何だ、子供だと思っていたが、16か17だったか、年齢相応にそこそこ一人前に見えるじゃないか。』

 子供と思って気にも留めていなかったが、よくよく見れば、つややかな黒髪に白い肌、大きな瞳の整った顔立ち、適度に丸みを帯びた体形と、

これで行動に女らしさ加われば、清楚な美少女で通用するだろうに、かの王室は、何でこんな風に育ててしまったのか。最も王室どころか、

いわゆる上流社会などという所とは、まったく縁が無い育ちのゼルガディスには、アメリアがそういう世界で異端かどうかと言われれば、

普通じゃないだろう、くらいしか返す言葉は無いが。

 そんな事を考えているうちに、ゼルガディスは、もともと好き好んで始めた訳ではない言い争いをしていた事も手伝ってか、事態の収束よりも、

この少々甘ったれた皇女様に対する興味という名の好奇心が、湧きあがって来た。

 必死で焦りを押し隠そうとする、アメリアの顔を近くで見ていると、吹き出しそうになるのを堪えて、こちらも平静を装い、いつもどおりの無愛想な小声で呟いた。

「だいたい、何であんたがそんな事を気にする。あんたには、関係ないことだろう。おれが何を目的にしようが、誰に対して何を思おうが、大きなお世話だろう。

それとも何か、お姫様には、聞かれた事はお答えしなくちゃいけないとでも?」

「・・・っ、いっ、いえ、決してそんなつもりじゃありません。」

 アメリアが焦ってしまった時点で、すでに勝負はついているのだが、本人は、今だ続けているつもりで、必死で感情を隠しているつもりだった。

何とか今の状況から抜け出す策を考えねばと、先ほどとは別の方向に頭を使っていた。いざとなったら、一発浴びせて逃げるか、などと物騒な事も

考えたが、目の前の男に素手でダメージを与えられるか、何とも言えない。呪文は、この位置で唱えたら、間違いなく相手に聞こえるだろう。

八方塞がりの現状だ。だからといって、離してくれとは、意地でも言えなかった。

「じゃあ何だ、あんたはいったい何をそんなに気にしている。リナとガウリイと、それにおれの事だ、あんたが気にすることは無いだろう。」

「そ、それは、やっぱり正義じゃありません。お心を寄せるにしても、相手はその、やっぱりお考えにならなくては・・・やっぱり正義じゃありません。」

「正義ねえ、正義ってやつは何か、人の考えにまで干渉するのか。それじゃもし、仮にそうだとしたら、あんたは正義とやらで、何とかしてくれるのか。」

「な、何とかと申しましても・・・それは、私にできる限りの事は、お手伝い致しますが。」

 後ろに下がろうにも、もともと窓枠に寄りかかっていたのだ、どうにもならない。ゼルガディスは、先ほどから、まったく立ち位置を変えず、

アメリアを開放する素振りは見せない。

 ゼルガディスの方は、アメリアが頼めば、すぐにでも開放するつもりだったが、どうも、この程度では折れるつもりは無いようだ。

子供相手なら気が引けるが、女というやつは、意外とこちらが思うほど子供ではないかもしれない。

「それじゃ、仮にだ。もしも、おれが気に留めている相手が、リナじゃないといったら、あんたはどうする。」

「えっ?」

 とっさに頭が廻らなかった。先ほどから目をそらす訳にも行かず、見つづけている相手の顔を、まじまじと見つめた。一見して異質な

髪と皮膚の所為で、見落としがちだが、顔立ちは整っていて、リナは美形だと称していたが、なるほど言われて見ればそのとおりだ。

もともと理想のタイプは父親だと思っているアメリアは、多少の異形など気にもしていなかったが、人と違うその皮膚の色を見つめているうちに、

冷静さを取り戻した。リナじゃないなら、もう一人しかいないが、それはありえない。

「それは、ありえません。ゼルガディスさんは、嘘を言っています。」

「どうして、ありえないと言い切れる。さっきからあんたは、おれの考えを決め付けてばかりだ。」

「だって、ありえません。先ほどから、あなたの態度は変わりすぎです。」

「そうだな、それならたった今、気が変わったといったらどうする。」

 変わらず無愛想に呟くと、アメリアの返事を待たずに、ギリギリ保っていた数cmの距離を詰めてきた。アメリアの唇に、なめした皮のような、

人の皮膚よりは硬いが、暖かい感触が伝わってきた。一瞬触れて一度離れたが、もう一度触れてきた。正直なところアメリアは、

突然の事に一瞬反応出来ないだけだった。

キスなど、亡き母と行方不明の姉、皇太子などという激務に着く前の父との、幼い頃の思い出の中にしかない。だからという訳でもないが

、2度触れてから、3度目に軽く啄んで離れる、優しい感触に抵抗する事など忘れていた。4度目に、深く唇を合わせると、舌がアメリアの唇をなぞった。

 さすがに焦ったアメリアは、両手で思い切り、目の前の胸を押しやった。体勢が悪いため、それはゼルガディスにたいした衝撃を与えられなかったが、

右手を開けて退路を作ってやった。そのまま、部屋を出て行くと思ったが、よほど慌てているのか何なのか、アメリアはベッドに飛び乗り、

毛布を掻き抱いて、こちらを睨みながら、ボロボロと泣き出した。

 何だ、やっぱり子供なだけかと、男は半分ホッとして、半分惜しい気持ちになった。それにしても、ベッドに逃げてどうする気だ。

本当は誘っているのか、と勘繰られるぞ。

やれやれ、やっと片がついた、少々遊びすぎたが、適当に治めてしまおうと思ったところに、タンタンタンタンっと、軽やかに階段を駆け上がる音、

トントントンと半分の回数で上って来る音、泊り客は他には居ない。

 

「じゃあねー!お休みガウリイ。アメリアたっだいまー。」

 ノックもしないでドアを空けて、入ってきたリナの目に飛び込んできたのは、ベッドで泣くアメリアと、窓際に経つゼルガディス。

「ゼル〜!あんたいったい何したの!!」

 叫びながら、ベッドに飛び乗り、アメリアの両肩に手を置いてゼルガディスを睨みつける。

「ヒック、まって、ヒック違うからリナァ。」

 しゃくりあげてろくに離せないアメリアが、何とかリナを止めようとする。

「リナ、なんだ。でかい声出して、どうかしたのか。」

 遅れて入って来たガウリイが、リナ、アメリア、ゼルガディスと順番に視線を送り、最後のゼルガディスに問いかけた。

「何かあったのか。」

ハッとため息を吐いて、いつもの無愛想な声で、リナに向かって言った。

「姫様は、どっかのバカップルが宿の庭でいちゃついているのを見て、驚かれたそうだよ。」

 見る間に真っ赤になったリナは、ベッドの脇に立っていた背の高い男の頭を、どこから取り出したのか、いつのまにか握っていたスリッパで、

思い切り叩いた。

「もう、だからこんな所でダメだって言ったじゃないの。」

「バカバカしい、おれは部屋に戻らせてもらうぞ。」

 ゼルガディスはさっさっと部屋を出て行く、ガウリイも頭をさすりながら、リナに二言三言話し掛けて出て行く、同じベッドの上で、

ようやく泣き止みかけているアメリアの顔を覗き込んで、あのリナが謝り続けている。

「ごめんね、ビックリすると思うから黙っていたんだけど、もうあのバカ、時と場所を考えないから。本当にごめんね。」

 何とも、見当違いの謝罪だが、とりあえず、謝意だけは伝わった。結局リナの中の認識と、現実のアメリアにギャップがあるための

誤解に過ぎないのだ。ギャップは少しずつ埋めればいい、友達である事は間違いないだろう。

「アメリア大丈夫なの。」

 ぐいぐいと両目をこすって顔を上げて、心配そうに覗き込む友人に、ニッと笑ってみせる。

「大丈夫、ちょっとした、誤解だけですから。それよりリナ。」

「な、何よ。」

「この間は、何でもないって言っていましたけど、今夜は、ちゃんと聞かせてもらえるわよね。」

「な、何をよ。」

「ガウリイさんの話を。」

「あ、明日は早いから、また今度ね。本当に、言うほどの事なんてないから。」

「いいですよ。明日でも明後日でも、いつでも聞きますからね。」

 アメリアが意味ありげに、に〜っこり笑うと、真っ赤な顔したリナは、そそくさとベッドを降りて、さあ早く寝るわよとか何とか呟きながら、

荷物をあさって着替えを始めた。

 アメリアは、明日ゼルガディスに謝るべきかを思案したが、最初に八つ当たりをしたのは自分だが、あちらも無礼を働いたのだ、

とりあえずキスと相殺でいいだろう、という結論で落ち着いた。

 驚いて、慌てて突き放してしまったが、本当のところ、ちょっとだけ惜しかったかな、とか考えている。別に嫌だった訳でない事は、

もう少しリナにも秘密にしておいても、許してもらえるだろう。

 

 大人気ない真似をしたと、キメラの男が少しばかり後悔している事など、夢見る乙女の好奇心は、知る由もない。

 

おわり

 

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