15巻終了後、ただのギャグ話。

ひたすら、名も無い親父達の会話、後半にあの人とガウリナが出て来ます。

 

黄昏時

 

 ゼフィーリア王国王都ゼフィールシティは、今まさに日が暮れようとしている。

一日の仕事を終え岐路につく者、長い道のりを越えて町についた者達が今夜の宿を探し、空っぽの腹に食事という名の栄養と、

疲れた体に酒という名の少しばかりの褒美を流し込むために、町に繰り出して行く。

そんな者達を目当てに宿や酒場は、客を自分の店に引き込もうとさまざまに趣向を凝らし、町の若い者や、旅から旅への少し強面の男達など、

派手にそして少し危険な夜の町へと変貌していく。

 若者や旅人で賑わう酒場街から、1本入った薄暗い路地は、表通りの店で飲むほどの金を持たない者を対象とする店、または派手に呑む事は

すでに卒業した、地元の年配男性たち行きつけの小さな店が軒を連ねている。

 そんな、地元のオヤジ行きつけの小さな店は、20年前は評判の美人だったであろうと推測される、ママが一人で切り盛りしていた。

今日も仕事を終えたオヤジたちが、女房の目を逃れ、ささやかな息抜きに顔を出していた。

 

「そういや、聞いたか。インバースの娘が帰って来たんだとよ。」

「帰って来たって、居ただろ。いつもリアランサーで見かけたぞ。」

「違う違う、そりゃ上の娘だよ。我が国が誇るスィーフィード騎士だろが。俺が言っているのは、下の娘だよ。」

「下〜・・・あぁ、ドラマタか。」

「そうそう下の、魔道士の、えーと・・・なんて名前だったかな。」

「リナちゃんでしょうが、ボケる歳じゃないでしょう。」

「おぉ、さすがママ、よく覚えているね。ったく、リナだのルナだの似たような名前付けやがるから、覚えられやしねえ。で、その娘が

3年ぶりだかに帰ってきたんだってよ。」

「ほー、それで娘バカのインバースの奴、今日は姿を見せねえのか。」

「いや、それがよ、その娘、連れて帰ってきたらしいんだよ。」

「連れて帰ってきた?犬猫の類か。それとも上の娘みたいに、物騒な生き物か。」

「アホか。年頃の娘がつれて帰ってきたモンと言や、これに決まっているだろうが。」

「男か。そりゃまた・・・面白え話だな。あのインバースの奴もいよいよか。で?どうしたんだ。」

「娘が欲しければ、俺を倒して行けとかなんとか言ったらしいぞ。」

「ほー、そりゃまた格好いいセリフだな。一遍ぐらい言ってみたいもんだ。それで?」

「倒されたらしいぞ。」

「うわっ、格好わりいな・・・やだやだ、歳はとりたくないもんだな。で?」

「そりゃお前ぇ、倒していけと言って、倒された以上、認めるしかないだろう。で、その男も、インバースの家に居るらしいぞ。」

「おぉ、その話俺も聞いたぞ。ウチの下の娘が見に行って、何かえらいイイ男だとか騒いでたわ。」

「そうそう、インバース奴と並べても遜色ない色男らしいぞ。それでそこそこ腕も立つから、あいつの女房も上の娘も気に入っちまった

らしくて、反対も出来なくなって、しぶしぶ認めた形になっちまったらしい。」

「あれ〜、でもよう、俺なんか別の話を聞いたような・・・」

「ふっ、これであいつも一人前の、娘を持つ父親って奴になったのよ。」

「そういや、お前ぇも去年、娘を嫁に出したんだっけ。」

 

 から〜ん♪、ぱったん。

「いらっしゃいませぇ。」

「よう、やけに早いな。店が潰れたか」

「うるせぇ、すでに出来上がってる奴に、言われる筋合いはねえよ。いつものくれや。」

「なんだ、客人連れて娘が帰って来たって聞いたぞ、こんなところに顔出していてイイのか。」

「うるせぇって言ってんだろが、知ってるクセしやがって、ゴチャゴチャ言ってやがると、タダじゃおかねぇぞ。ったく、どいつもこいつも、

井戸端のババァじゃあるめえし、つまんねぇ話してんじゃねぇよ。」

「まあ、そうカリカリすんなよ。娘なんかな、どうせ何時かは、他の男に持って行かれちまうモンだよ。」

「お前ぇのところの上の娘みたいにか?」

「そうだよ、チクショウが。あんな小汚え宿屋の嫁にやるために、17年も大事に育てたわけじゃねえよ。」

「けっ、誰がそんなつまんねぇ事で、いちいち・・・あんなドラマタ魔道士娘が欲しいなんて物好きは、金輪際、現われやしねぇから、

熨斗付けてくれてやるんだよ。」

「ほーっ」

「ほーっ」

「ほーっ」

「死にてえのか、てめぇらは・・・」

 

 から〜ん♪、ぱったん。

「いらっしゃいませぇ。」

「あっ、オレは客じゃないから。本当にここに居たのか。」

「・・・なんだ天然。酒場に来て客じゃないとか、気が利かねぇ事を言ってんじゃねえぞ。何の用だ。」

「お母さんが、あんたにこれを届けてくれって、ここの場所を言われたけど、本当に居るんだ。」

「何で、てめぇが人の女房を、お母さんなんて呼んでいやがる。だいたいこの店はツケでいけるから、財布はいいんだよ。」

「そのあんたの女房が、そう呼べって言ったからだけど。あと、リナが血相変えてあんた探していたから、そろそろ来る・・・来たみたいだ。」

 

 がぁらぁ〜〜んんん>>>>>、ばっこん、ばっこん、ばこばこ>>>>>

「ちょっと〜!とうちゃ〜ん!!」

「リナ、扉は静かに開けろ。壊れるじゃないか。」

「うっさい、それどころじゃないでしょうが。だいたい何であんたが居るのよ。」

「ーったく!お前ぇらは・・・騒ぐんじゃねえよ。」

「騒ぐんじゃない、じゃないわよ、とうちゃん!どういうつもりよ。」

「いきなり入ってきて、どういうつもりも、へったくれもあるか。順序だてて説明しろと、いつも言っているだろうが。」

「じゃあ、お聞きしますけど、父ちゃん。どういうつもりして、このあたしを、ヘイザー牧場の次男坊のところに、嫁にやるなんて

約束をしたのかしら。」

「はぁー、俺がそんな約束するわけねぇだろうが。」

「とぼけないでよ。それじゃなんで、あのバカがそこらで、あたしを嫁に貰うとか言いふらしてんのよ。あまつさえ、さっき店まで来て、

このあたしに、父ちゃんが許可したからそのつもりで居ろ、とか言いくさったのよ。なんだって言うのよ。」

「おーっ、それそれ、その話だよ。俺が聞いたのも、何か変だと思ったんだよ。」

「うるせぇ、外野は引っ込んでやがれ。・・・それなら多分、去年あのバカ息子が、お前を嫁に貰いたいとか抜かしたから、お前が帰ってきたら

勝手に口説け、あいつが承知したなら俺はかまわねぇ、って言ってやったがな。」

「何で、はっきり断らないのよ!おかげで話がややこしくなっているじゃないの。だいたい、このあたしが、あんなバカと、

そんな話があるだけで、我慢できないわよ。」

「まあまあ、リナちゃん。それならこっちの兄ちゃんに、ゼフィーリア流にヘイザーのバカ息子をたたんで追っ払ってもらえばイイじゃないか。

それなら、誰も文句は言えねぇし。」

「肉屋のおっちゃん、あのバカなら、さっき、あたしが自分でふっ飛ばしておいたわよ。もーっ、父ちゃんこれからは不用意な事を

言わないでよね。ガウリイ。帰ろう。」

「ちょっと待て、リナ。天然は置いていけ。母ちゃんがわざわざ財布を持たして来させたんだから、そういう事だろう。このまま返したら、

何を言われるか、わかったもんじゃねぇ。」

「・・・飲み代くらい、あたし達自分で払うわよ。」

「リナちゃん、ここは親父に華を持たせてやれって。まあ、寂れたつまんねぇ店でオヤジ相手じゃ、兄ちゃんには面白くないだろうけど、

たまにはイイだろうよ。」

「〜、わかったわよ。ガウリイ、記憶が無くなるまで飲んだらダメだからね。適当にしてよ。それで、ちゃんと父ちゃんを連れて帰ってきてよ。

この親父は、糸の切れた凧だから。」

「おい、リナ。一緒になる前から、女房面してうるせぇ事を言ってやがると、天然に逃げられっぞ。」

///////誰がよ!ちょっと、ガウリイこっち来て。」

 

「あーあ、何も戸の外まで行って話さなくても。いいねぇ、初々しくて、なあママ。」

「可愛いわね〜リナちゃん。この間、帰ってきたときは全然子供だったのに、ねえ?」

「いや、あの二人、あの様子だと、もう出来上がってんじゃないのか。」

「おい、インバース。通夜の席みたいな顔して飲んでんじゃねえぞ。娘しかいないお前の家に、いい婿のきてがあったんだから、喜べってんだ。」

「何がだ。ったく、ロクなモンじゃねぇから、傭兵だけは止めておけって、あれほど言っておいたってのに、よりにもよって傭兵上がりだぞ。

親の言う事を何だと思っていやがるんだ。」

「お前が言ってもな、別に良さそうな奴じゃねえか。」

「ろくでもない奴なら、とっくに叩き出してる。事ここに至っちゃ、もう何言ってもしょうがねぇだろが。親が何か言って引っ込むようには、

育てなかったんだよ上も下も。ったくよー、よりによってあいつかよ。一生の不覚ってヤツだ。」

「はぁ?何が不覚だって。」

「うるせぇって、何べん言わせる気だ。黙って飲んでやがれ。」

「あら、リナちゃんたち、話が終わったみたいよ。」

 

 から〜ん♪、ぱったん。

 

おしまい

 

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