Twitter診断。『ガウリイが手を取って「嫁にこないか?或いは婿でもいいが」と言う愛のある話を

RTされたらかいてください。』

から、うまく書けたら、おなぐさみ〜(と言いながら結局肝心のセリフが少々違います…)

 

「どうでもいいから」

 

ドグォォォ・・・ン・・・・

 

派手な音とともに、少し離れた場所に上がる煙いや水蒸気を横目で見すえ、

同じようにそちらに意識を取られた5人ばかりの敵に剣の切っ先を向けながら、

背の高い男は動きを止めた。

「あーぁ、派手にやってるな。まいったな…」

 へたくそな芝居の方がまだましな棒読みでで呟くと、隙ありとばかりに突っ込んできた男を

軽くいなす。

「悪いな、かまってやる暇がなくなった。」

 軽く構えなおして、躊躇もせずに敵のど真ん中に突っ込んで行く。

 

 珍しく依頼で向かった山賊のアジトは、セオリー通りの男たちと、なかなか腕の立つ

(その上美人な)女魔道士がいたことは、どっちにとって不運だったのか、今となっては

どうでもいいことだ。

 

 男どもはガウリイに任せて、魔道士を追って山道を来たリナには、それなりの罠が用意されていて

少々手間どっていた。力任せに押してもいいが、山を山賊から取り返してほしいという依頼である以上、

あまり派手に破壊活動を行って、山そのものを破壊しては話にならない。そして女二人の争いは

いつの間にやら口合戦の様相も呈してきた。

「大人しくつかまりなさいよ。抵抗しても無駄なのよ、この厚化粧のおばさんがー!」

「誰がおばさんよ!生意気な、子供のくせに!!」

「誰が子供だ!あたしは18よ。」

「18〜、その顔その体で…嘘も大概にしなさいな、女だったら年相応なものが色々あるのよ、

見ればわかるわよ。」

「誰がそんなつまんないことで、嘘言うかー!」

 手加減しているとはいえ、あたし相手にポンポンと口と一緒に呪文を繰り出すとはなかなかの

腕前と、リナが間合いを取って構えなおした隙に、その言葉は、いやらしい笑いの張り付いた

赤い唇から発せられた。

「あら、本当に18だったの。どうりで…それじゃ、あんないい男と一緒に居ても何もないのも

無理ないわねー。乱暴なだけで子供のままじゃ、男だって一応でも女じゃないとその気に

ならないものね。」

「誰が何だってー!!」

 本来なら名もない女魔道士など圧倒できるはずだったが、頭に血の上ったリナが放った呪文は

相手のそれと互角でしかなく、ぶつかり合って派手な爆発を引き起こした。

 

「ーったく、泥だらけになったじゃないの、ふざけんじゃないわよ。余計なこと言わなけりゃ

手加減もしてあげたものを・・・この、あたしと呪文合戦しようなんて、百年早いっつーのよ。」

 地面に転がって呻いている女魔道士を見下ろして、バサバサとマントを振るった。

「まあ、あたしの呪文に水系の呪文をぶつけてきたのは褒めてあげますけど、後の対応が

まずいわね。あのタイミングじゃ爆発するのよ、隠れるなり伏せるなりしないとね、

実戦経験の差よ。」

 もう聞いて居るのかいないのか…朦朧とした目を向けてくる女に言い放ち、立ち去ろう

とした背中に、声がかかった。

「こら、山は破壊するなって言われただろうが。」

 振り向いたリナは、真っ赤な顔をして大きな瞳に涙を浮かべて、口をへの字に曲げていた。

 

 近くで待機していた町の私兵と一緒にふん縛った山賊どもを引き連れて戻れば、大喜びの

町長がガウリイの手を取ってぶんぶんと振りながら感謝の意を述べて、約束の謝礼のほかに

豪勢なディナーに招待してくれたうえ、でっかい敷地の庭の隅にある離れに好きなだけ

滞在してくれていいと、大盤振る舞いだ。

 いつもなら余計な要求を追加しそうなリナが、言われるままに返事をするため話は早々に決まり、

牢に繋がれるため引き連れられる山賊どもと同じ道を歩くことになった。もちろん呪文を

使えないように猿轡をかまされたあの女魔道士も一緒だった。観念したのか、すっかりおとなしく

歩いていたが、高台にある町長の屋敷の手前に位置する町の私兵のための兵舎の入口の前に来ると、

無理をしてグイと立ち上がり、ガウリイの隣に立つリナを見て見下したような視線を向けて

ニヤッと笑った。

「なんだ…今の。」

 相変わらず緊張感のないガウリイの問いに、リナは返事をしなかった。

 

「やれやれ、終わった、終わった。」

 それが仕事を指しているのか、豪華だがちょっと堅苦しかった町のお偉いさん達とのディナーを

指すのか、どちらでも構わないのでリナは特に返事もせずに聞き流した。

 町長の屋敷の離れは、小さいながら母屋に及ばずともなかなかの造りで調度品もそれなりの物が

揃っていて、リナが腰かけているソファーも大きくて柔らかすぎず硬すぎず絶妙のすわり心地だ。

町長はメイドも付けると言っていたが、それはガウリイが即座に断ってしまった。その時の町長の

にやにや顔を思い出して、ソファーの張地とおそろいのクッションをボスボスと殴りまくった。

「何をしてんだ、お前…。なんか変だぞ、大丈夫かー。」

 いつの間にやって来たのか、リナの隣にドカッと座るとリナの額のバンダナを有無を言わさず

取り外した。

「ちょ…ちょっと何すんのよ。」

 退けようと奮闘するリナの手など意に介さず、大きな手でリナの額を覆ってきた。

「いや、邪魔だから…お前なんか変だぞ。やたら赤い顔して、晩飯も大して食わないで、

熱でもあるんだろ…別に熱はないか。でもなんかまだ顔が赤いぞ。」

 あきらめてクッションを抱え込んだリナの顔を覗き込みながら、いまだ納得がいかない

といった様子だ。

 

『−お前の実家−なんてのはどうだ?』

あのセリフからはや半月余り、そういう意味だと思ってはいるが、今一つ真意を計りかねている

リナに反して、ガウリイの方は、ささやかな壁というか最後に引いてあった他人としての

一線を越えてこようとしている気がする。

 そんなこんなで少々焦っているときにあの女のあのセリフだ。面白くないのは間違いないが、

冷静になった今となってはあながち間違いじゃない気がするのが、少々悔しい。

「で、なんか言われたのか?」

 そんな心情を知ってか知らずか、当の本人は平気な顔して隣に座って聞いてくる。

「言いたくない。」

「オレには関係ない話か。」

「ものすごく関係ある話だけどー。」

 そうかそうかと言いながら、腕を上げてリナの頭をぐしゃぐしゃとかき回す。

クッションを胸に抱えたリナは、そのままガウリイの方へ倒れこんでみた。体と体の間の太い

腕がリナの背中側に回っていたのもあるが、思ったより簡単にがっしりした胸に倚りかかること

ができた。一瞬だけ動きの止まった腕は、そのままリナの頭(肩じゃないのが悲しいところだが)

を抱え込んでくれた。

 ドキドキよりも安心してしまっている自分に気が付いたのも焦っている要因の一つなんだけど、

肝心なことは何一つ言わないくせに、こんな風に慣らされてしまっている。

「なんだかな〜…」

「なんだー。」

「んー、あんたの家って何処だっけ?」

「エルメキア。」

「それは知ってる、エルメキアの何処?」

「王都のはずれ…聞いて分かるのか。」

「分かるわけないじゃん。聞いただけ…」

 リナの頭を抱えていた腕がするりと肩に落ちてきた。少しだけ肩が動いた。

「お前の家って、どんな風だ。」

「ただの雑貨屋。父ちゃんは元傭兵で、母ちゃんは魔道士、姉ちゃんはウエイトレスで…騎士。」

「それは聞いたぞ、どんなうちだ。」

「ん〜、普通じゃないけど…でも普通。父ちゃんは甘くて母ちゃんは厳しい。姉ちゃんは強いやつ

と勝負するの好きだから、覚悟しといたほうがいいわよ。」

「はは…スィーフィード騎士と稽古できるんなら望むところだな。」

「おっと、ちゃんと覚えてたんだ…自分に興味のあるとこだけね。稽古で済めばいいけどね。」

「お前な〜…」

 大きな手が静かに肩から離れて、ゆっくりと髪を撫でていく。ちょっとだけドキッとしたのが

癪に障るので動きに合わせて少しづつ体重をかけてやったが、どうやらビクともしないようだ。

そりゃそうかと、リナはひそかに苦笑した。

「ねえ…」

「ん〜…」

「次はどこ行くのー。」

「お前の家だろ…」

「その後、どうしたいの?」

「あー…今言うのか。」

「言えない理由でもあるっての…」

「いや…そりゃお前の家を目の前にして、今さら…あれだ、余計な事してもなんだろ。」

「あ゛―…」

 思わず、そう反射的に引きそうになった小さな体は、がっちりと太い腕にホールドされていた。

いや、今さら逃げる気はないわよ。と開き直って、もう一度大きな体に全体重を預けた。

「それはいいから、そんな御大層な家じゃないから。そんな事はどうでもいいの。」

「どうでも、いいって…」

「どうでもいいの!」

 はぁ〜っと多きなため息を一つ吐いて背もたれから身を起こし、そのままリナを抱えて

ソファーから立ち上った。えぇっと小さな声を上げるのにはかまわず、自分の正面に立たせると、

強引に両手を取った。

 改めて正面に立つと、今まで顔が見えないから言いたいこと言っていたんだな…

と少々気後れするが、ええい、この程度のこと世界がかかっている訳でもない。

リナはグイと顔を上げて正面を見据えた。途端に笑いそうになった男を睨みつけて…

制したと思う事にした。多分…

「よし、それじゃ、お前オレん所に嫁に来るか。」

 ぐっと息をのんで、みるみる真っ赤になりながら、口は正反対のことを呟いた。

「エルメキアなんて知らない所に行くのは…やだな。」

「それじゃ、オレが婿に行ってもいいぞ。」

「何でそうなるのよ…あたしの夢は、玉の輿でお嫁に行くことなんだから…」

「いや、そう言われても困るんだが。」

「だから、オリハルコン一袋と斬妖剣で手をうってあげる。」

「なんだか、可愛くねーな…」

 屈みこみながらリナの耳元にささやくと、そのままひょいと抱き上げた。

「ちょっと、ガウリイ何すんのよ。」

「いいからジッとしてろ、顔が見えると照れくさい。」

「子供じゃあるまいし、馬鹿じゃないの…」

 人のこと言えるか、と聞こえた声は無視して、首に手をまわして抱き着いてやった。

大きくてがっしりしてあったかいなー…くらいしか思わないあたり相当慣らされてるけど、

まあ今さらしょうがないよね。一人ちょっとロマンチックな気分に浸っていたのに、

この男の次のセリフは、ろくでもない。

「あー、なんだ。別に我慢できそうだ。」

「なによ。色気がないからとでも言いたいの。」

「いや、楽しみは先にとっておく。…ってこら首を絞めるな。」

 その後二人して散々じゃれてから、あたしを抱えたままのガウリイがソファーに座り込んで、

飽きるまで引っ付いていた。

 

おわり

 

 

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