ガウリナ10のお題(前) 01.05.は続き物の予定

 

01. 自称保護者

02. 共に行く理由

03. 殴るわよ

04. 大人と子供

05. 古傷

 

 

殴るわよ

 

穏やかに晴れた昼下がり、旅人や商人が多く行き交う正規のルートとは少しはずれた田舎道を旅人にしては少々持ち物の多い背の高い男と、

その体には大きめな荷物を肩から袈裟掛けに吊った小柄な女が続いて歩いていく。

時々抱えた荷の重さに耐えきれないように立ち止まる女に合わせて、ゆっくりと歩く二人ではあるが、日が傾くにはまだ少し間のあるうちに

町というには小さく村というには大きい集落にたどり着くことができた。

大きな剣を吊った男と黒いマントにぴったりとしたズボン姿の女の二人連れは、少々人目を引いたが、よく見ると女の抱えた布の中身は、

かわいらしい赤ん坊で、少々毛色の変わった二人を訝しんでいた者たちも、単なる夫婦者と安心したのかすぐに思い思いに散っていった。

 

重い・・・赤ん坊が、こんなに重いとは思わなかった。布にくるんだ赤ん坊を肩に下げて歩くこと2日め、リナは早くも自分の甘さを痛感していた。

しかもこの時点で初めの予定の半分の行程も進んでいないのが、どちらの責任かは言うまでもない。ちらりと少し前を行くガウリイを見るが、

いつもの旅装備にグレイスいや彼の命名によるグレイトの荷物と当たると危ないとはずしたリナの防具や魔道具の類まで持たせているのだ、

この件の言い出しっぺとして、これ以上何を言えるというのか、黙って後に続くしかない。

それに彼にはもう一つ、やっかいなお役目を押しつけてあったのだ。

「すみません、ちょっとお聞きしたいんですが・・・」

リナにとしては不本意ではあるが、値段を一切無視して子連れでも快適そうな宿を早々に決め荷物をほどくよりまず先に、この町でこちらの

頼みを聞いてくれそうな家の有無と所在を確認して、できれば交渉も宿の人間にお願いする。普段ならば交渉ごとはリナの管轄だが、どうにも

気の進まずガウリイに丸投げしていた。しかしそれは、始める前の予想に反して今日も意外なほどあっさりと見つけることができた。

「やあ、大変ですね、うちのやつは3人目で何の問題もないから大丈夫ですよ。」

宿の主人の紹介してくれた家では、若い男がにこやかに対応しながら、うちのやつこと自分の妻のところに案内してくれた。部屋で待つ女は、

あからさまな不満を隠すことなく表情に表していたが、黙ってリナからグレイトを受け取った。リナもいくらか複雑な心境になったが、

こればっかりは仕方ない、こちらの頼みとは要するに貰い乳である。

幸いにしてグレイトはそこそこ育っていたので、固形物も食べることはできるが、まだできるならば母乳も飲ませた方がいいと例の宿の女将の

アドバイスに従うことにした。それにしても分かってはいたが、本当にお金さえ出せば何でも手にはいるのだと、リナは改めて認識した。

先日の貰い乳をした母親は、リナと一回りも歳が違うと思われる威勢のいい女性で、母乳を出すためのアドバイスとやらをグレイトに乳を

含ませている間中たっぷりとしてくれた。もちろん自分には関係ない事ではあるが、その間違いを正すのも面倒で、うんうんと頷き続けた。

今日の母親は、不機嫌な顔でちらちらとリナの様子を伺って時々何だか見るとむっとするとしか言いようのない笑いを浮かべていて、少々気分が悪い。

売られた喧嘩は、多少腑に落ちなくても買っておくのが故郷のやり方、お腹いっぱいになって女の乳から離れたグレイトを受け取って、

ぽんぽんと背中を叩きながらリナにしては、めいっぱい甘えた声で外に向かって呼びかけた。

ガウリイは、さすがに乳を含ませる女と同じ部屋にいるわけにはいかず、妻とは対照的に終始ご機嫌なここの主人と適当な世間話に興じていた時に

、隣の部屋から殆ど聞いたこともないような声色の相棒の呼びかけに、体裁を調える暇もなくうわずった声で答える羽目になった。

「どうもお世話になりました。」

当たり障りのない礼の言葉を添えて、幾ばくかの金を男に握らせる。

「いえいえ、まだこちらに滞在するんでしたら、いつでもどうぞ。」

自分が何をするわけでもないのに当然のように話す亭主の後ろで、女が黙ったままリナに冷ややかな視線を送っている。

来たとき同様ガウリイに全て任せ、その後ろで当然のような顔をして、その視線を受け流していた。

「行くぞ。」

「待って、ゆっくり歩いて赤ちゃん重いから。」

言われたとおりに歩みを弛めるガウリイの横に並んでから、ちらりと後ろを振り返ると、冷ややかな視線は別のはっきりとした感情のそれに変わっていた。

おそらく、この勝負はリナの勝ちであろうが、こんなもやもやした勝ちは味わったことがない。

隣を歩く男のブーツがリナの足の半分ほどの回数で視線に入ってくるのを数えながら、静かに呼吸を整えても、胸のもやもやは追い出せなかった。

 

正規のルート少しばかり外れた場所にあるとはいえ、旅に程良いこの季節、昼は閑散としていた宿も夜は満員だった。

食堂の端っこに陣取って誰よりも早く食事を始めた二人だったが、ほかの客が引き上げる頃になっても、やっと半分を終えただけだった。

特別に用意してもらった味のないスープをリナが四苦八苦しながら飲ませている横でガウリイは茹でただけの野菜や芋を小鉢でガツガツと音をたてて潰していた。

その間に自分の食事を口に運んでいるので味なんか分かったものではない。まあ、違和感がないからきっと美味しいのだろう。

「なあ、こいつこれを全部食うのか。」

「たぶんそれくらいだと思った。とりあえずいけるところまでいこう。」

結局普段の3倍ほどの時間をかけて、ようやく食事は終了した。宿の主人に頭を下げて退出したが、にやにや笑いで見送られた。

だめだめ夫婦だと思われたのは間違いないが、訂正する気力はとっくの昔に尽きていた。

こうも疲れているときは、部屋に入ったらベッドにダイブして、そのまま寝てしまいたいところだが、子連れの現状では、そうもいかない。

しかも今日は何故か、ガウリイが同じ部屋にいるのだ。空き部屋が一つだった訳でもないのに、貰い乳の交渉の延長か何かのように、

リナに相談もなくさっさと決めてしまった。

長いこと一緒に旅しているが、ガウリイの行動は時々リナの理解の範疇を越える。大部分は後に判明するので良いといえば良いのだが、

それなりに長く二人で旅をしているというのに意志疎通を図る気もないのは、いささか問題ではないかと度々言い聞かせているのだが、

いっこうに改善されることはない。もう信用しているついでに諦めたのだった。

「ガウリイ、あたし洗濯してくるけどー。」

「あー、ちょっと待てオレも出るから。」

「それじゃその袋を持ってきてよ、あたしはグレイト連れて出るから。」

例の籠にグレイト(もうそれでイイことにした)を乗せて宿の裏手の井戸に向かう。洗濯に借りることはもう許可済みだ。

これから大量のおむつを洗濯して干して・・・自分が言い出したことじゃなければ、とっくに投げ出しているわ。

ガウリイが追いついてこないのを確かめて、リナは大きなため息をついた。

 

ひゅんひゅんと剣が空を切る音を聞きながら、傍らに籠に入った赤ん坊をおいてザブザブと洗濯を始める。

別に洗濯は女の仕事とか思って自分でやっているわけではなく、あくまで言い出したのが自分だからで、井戸から水を汲むのと干すのは手伝わせているから、

などと自分に対する言い訳を並べ立てて見てはいるが、実の所はガウリイの剣を降る音を聞いているのはかなり好きだからでもある。

自分ではどうやっても出せない音だし、そういった意味では憧れであるといっても良い。子供の頃から本気で取り組んできた者だけが出せる音だ。

まあこれはこれで楽しい時間かもしれないと思うこともできるかな。

リナが数枚のおしめの洗濯を終えたあたりで、ふいに水音以外の音が消えた。

今まで振り回していた剣を持ち直し、建物の影の暗闇に視線を向けて動かないガウリイにリナは小さな声で

「何?」

と聞いてみたが、それに対する返事はない。

「誰だ?」

必要最小限の問いは、誰も居ないかのように静まり返った暗闇に向かって発せられた。ただリナが水から両手を上げてグレイトの入った

籠を引き寄せるには十分な台詞だ。

しばしの沈黙の後に現れたのは、拍子抜けするようなチンピラそのものの3人組で、ニヤニヤと笑いながらながら真っ直ぐ歩けんのかと突っ込みを

入れたいような歩き方で、こちらに向かってやって来た。

「よう兄ちゃん、黙ってその赤ん坊をこっちに渡してもらおうか。」

「おい・・・、赤ん坊と姉ちゃんも置いていってもらおうか。」

隣のやつが慌てて言い直すが、今更遅いわ。リナが呆れて隣に目をやれば、

「なぁリナ、女はともかく赤ん坊なんてどうするんだ。」

こちらも相変わらずの予想外の台詞だった。

「あのねぇ、そういう問題じゃないでしょ。それにいくらでもあるでしょ、養子斡旋とか奴隷とか魔導士の・・・あれとかさぁ。」

「・・・あ、あぁ。」

雑魚相手なのに何故か緊張を解かず、正面を見据えたままの端正の横顔から発せられているとは思えない気のない返事を返してくる。

「おいこら!何をゴチャゴチャやってやがる。さっさとしないと痛い目見ることになるぞ。」

リナが視線を戻すと3人組はいつの間にか剣を抜いていた。この程度の相手ならリナが一人で剣で相手もできそうだが、

「よーし!行けガウリイ。後は任せた。」

「はぁ?おまえの大好きなチンピラだろ。おまえやれよ。

「あら、何を仰いますの、私にはこの子が居ますのよ。ここは殿方にお願いしますわ。」

籠からグレイトを抱き上げてニッコリのつもりでニンマリと笑った。

「ったく、こんな時ばっかり。おい、オレは少しばかり疲れてるから手加減してやれないぞ。」

珍しく脅し文句を吐きながら切っ先を三人組の真ん中あたりに向けた。

解説するのもバカバカしいほどあっさりと勝負はついた。あんな台詞を吐いたくせに、剣の腹で腕を払って相手の剣をたたき落とすだけですますとか、

骨折ぐらいしてるにしても親切よね。リナは終わったと思ったが、ガウリイの方は剣を降ろさず相変わらず建物の影から視線を外さない。

正直よく分からないが、手の中の赤ん坊を抱き直しガウリイの背に隠れるように位置を変えた。

「用があるなら聞くぞ。」

普段の口調とさして変わらない緊張感のない話し方で問いかける。今度はリナでも分かった、暗闇の気配は動揺しているようだ。

少しの間をおいて男が二人姿を現した。先ほどの3人とは違いまともな身なりで、それなりの勤め先を持っている剣士かもしれない。腕もそこそこイイだろう。

「で、何か用かしら。」

格好悪いが、ガウリイの後ろから問いかける。

「その赤ん坊を渡してもらいたい。」

前に立つ男があっさりと答えた。

「私たちの依頼主が探している。売り飛ばすなどと物騒な理由ではない。渡してもらいたい、礼は充分にする。」

簡潔な答えだが、はいそうですかと言えるほどの説明になっていない。さりとて、このまま子連れで進んでも苦労に見合うだけの報酬が約束されている

訳でない現状では、悪い話でもなさそうだ。ガウリイの背から顔も出さず答える。

「何の話かしら、意味が分からないわ。何か勘違いしているんじゃないの。」

「・・・!」

後ろの男が剣を抜いたが、前の男が制する。目の前の大きな背中はぴくりとも動かない、2対1でも全く問題はないだろう。

こんな時は本当に頼りになる男だ、おかげで交渉に集中できる

「そちらこそ勘違いだ、あんたたちが子供を預かった町での調べもついている。あの女が子供を誘拐したんだ、探しているのは父親だ。

身元も確かだ、それに間違いはない。こちらに渡してもらいたい。」

もっともらしい話だが、それでも子供をハイそうですかと渡すほどの、シリルが母親でないと言う説明にはなっていない。

「へー、父親って、どこのどなたかしら。」

「それは明かせない。今度のことは表沙汰にする訳にはいかないので、黙ってその子を渡してもらいたい。謝礼は充分にするつもりだ。」

謝礼は魅力的だけど腕の中の赤ん坊を売り渡すほど守銭奴でもなければ金に困っているわけでもない。

「悪いけどそちらの勘違いよ。ほかを当たってくれない、それとも・・・」

リナが息を吸って次の台詞と空気を吐き出すまでの一瞬の隙に別の声が暗闇に響いた。

「で、その父親ってのはどこに居るんだ。あんたか。」

その声には、いつものノホホンとした柔らかさも戦闘時の厳しさもない、リナすら聞いたこともない、いやリナだからこそ聞くはずもない、当たり前の男の声だ。

「それは明かせない。聞き入れていただけないならこちらにもそれ相応の覚悟があるが・・・」

手の中の赤ん坊がむずがるほどのピリピリした空気が漂い、仕方なくリナも身構える。

「結果が見えてる勝負をするほどバカじゃないだろう。依頼主とやらに言っておけ、欲しけりゃ自分で取りに来い。」

珍しく雄弁な相棒の横顔に違和感を感じながらも、決裂してしまった交渉を引き戻すために言葉を選ぶ。

「どちらにしても、正体も明かさないような人間に取り合う気は無いと依頼主に伝えなさいよ。」

剣を抜いたままの後ろの男を制しながら、数秒の間をおいて手前の男は返事を返した。

「わかった、依頼主に伝えよう。出直してくる。」

不満げな後ろの男に一瞥をくれて剣を納めさせると姿を表した時と同じ建物の裏の暗闇に消えていった。10秒ほどでガウリイが剣をおろしたので

リナは彼の背中から隣に移動した。

「何だか面倒な事情がありそうな子だったみたいね。」

リナが腕の中の赤ん坊をを見下ろせば先ほどむずがったことなど忘れたように眠りこけていた。この子は大物になりそうだ。

「正体のわからない奴に渡すわけにはいかないだろ。」

いつもの声に戻っているな、さっきのは何だったんだ。疑問は生じたが問うた所で答えまい。無駄なことはしないことにして本題を続ける。

「まあ、あの様子ならまた向こうから接触してくるでしょ。こっちは予定通りに進んで結果待ちしかないわね。」

グレイトを籠に戻して両手を上げて伸びをする。さーて洗濯物の続きが待っている。

「そういやガウリイ?」

ほんのちょっことだけ高めの声で呼びながら相変わらず暗闇を見つめていた相棒の顔を下からのぞき込む。

「もしかして分かっていて同室だったわけ、前にも行ったよね、ちゃんと説明しようって。」

見下ろす顔は、今その話かとか面倒だなとかリナには意味が分からないちょっと嬉しそうな何かが混じったいつものガウリイに戻っていた。

「そりゃそうだが、誰があいつ等か分からない以上どこかで聞かれちゃ困るし、別の部屋取ったんじゃいざという時すっとぼける理由がなくなるだろ。」

それはつまりここ何日かずうっと勘違いされ続けているあれのことか、最初から承知のうえでごまかす理由に使おうとしていたっていうのか、

ガウリイにしては考えているじゃない。そんな失礼なことをリナが考えているというのに腕まくりしながら近づいてくる。

「それより手伝うからとっとと終わらせて部屋に帰ろうぜ。そろそろ冷えてきただろ。」

 

宿の窓に縄を張っておしめをバタバタはためかせて本日の仕事は終了。二つあるベッドの片方にグレイトを寝かせて隣にリナも倒れ込む。

「あー・・・やっと寝られる。」

いやまあこれですむ訳じゃないんだ、夜中に1回か2回は必ず目を覚まして泣くんだよね。

母親がいない割には大物というか図々しいというか手間のかからない(らしい)子だが、泣くときは泣く。そうなれば夜の宿では色々問題もでるので

泣きやむまで外を歩き回る羽目になる。おかげで二人そろって寝不足なのも旅の遅れの要因である。今はよく眠っている幼子の頬をなでていると、

小さな体の向こう側にでかい図体が音もなく滑り込んできた。いやちょっと待ってよ、そんなにスペースあったのかこのベッド?いやそこじゃなくて

「ちょっと何してんのよ。乙女のベッドに断りもなく。」

「いや今晩はおまえはこいつが泣いても外にでるな。あいつらもういないと思うが念のためな。」

ずいぶんと殊勝な心がけと思っても乙女のベッドに寝ていい理由にはならないぞ。

「あらそれじゃ代わりに行ってくださるのかしら。」

「他にいないだろ、それとも二人そろって出かけるか。」

「いーえ、よろしくお願いします。」

リナの反対側から大きな手も幼子の頬なで始める。何だろう知らなかったけどこの男はそれなりに子供好きなんだろうか。

そんな風にも思えるがあの時のいつもと違う感じはそれだけで怒っていたわけでもないだろう。先ほど不毛と思ったはずなのに

今は聞けるような気がしてきた。

「ねえあんたさっきさ、この子の父親が誰とかあいつらに聞いたとき何か不機嫌じゃなかった。」

いきなりの問いに少々驚いたような顔をしたものの、そうだったか忘れたといつものおとぼけを返してくる。

「自分で探しにくるような父親なら、少なくとも見ず知らずのオレたちに赤ん坊を置いていくような母親よりましかもしれないしな。」

それは擁護するわけでもないがシリルにも事情があったかもと思わないでもない。まあ確かに旅の魔導士と剣士とか胡散臭いこと

この上ない組み合わせだ。

「もしそうならそっちに渡すの。」

「仕事だからなそうも行かないが、こいつが良い方に渡してやりたいよな。」

何だか色々考えてるじゃん。いつも仕事はあたしに投げっぱなしのくせに、何だか面白くない。

「父親と母親の双方の言い分が聞ければねー。物騒な連中が絡んでなければイイんだけど。」

「物騒なのはおまえの専門だろ。」

「あんたに言われたくないわ。それに今回のことであたしが料理だけじゃなくて家事全般が出来るってことが分かっでしょ。

みんなあたしが母親だと勘違いしてたじゃない。」

「ダメ親だって思われてただけだろ・・・こらっ、こんなところで手を出すな。こいつが起きるだろ。」

「いちいち余計なこと言わないの!あんただって一緒に思われてるんでしょうが。」

言ってしまったと思ったが、もう言ったことが戻る訳じゃい、目の前の男を上目遣いに睨みつけると一瞬きょとんとした顔をしたが

すぐに苦笑いを始めた。

「そりゃそうだ、二人してダメ親ってんじゃなおのこと、こいつにいい親を探してやらないとな。」

今にも笑いだしそうな顔で真面目なこと言ってんじゃないわよ。けっきょくまたこの男は肝心なことには答えない訳だよね。

「まあそれにしてもダメとは言え、リナも母親に見えるくらいにはなれたって事だな。そういわれれば最近ちょっと変わったよな。」

今度は意味深な事を言いながらリナの頭を大きな手でわしわしと撫でてくる。見直したのか子供扱いなのかハッキリしろ!

と怒鳴りたいところなのに上目遣いのまま口をへの字に曲げたリナは一言発するのが精一杯だった。

「もう1発殴るわよ。」

 

つづく

 

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